「死ぬな」の先は。

第293回 マル激トーク・オン・ディマンド "いじめを無くすためにまず私たちがすべきこと"
ゲスト:内藤朝雄氏(社会学者・明治大学助教授)


子どもの自殺について、日本ではいろいろと言われているようだ。
生活空間が学校空間にほぼ限られてしまっている日本の子どもにとって、学校でいじめにあうというのは言葉の本当の意味で死活問題である。
子どもがそういうバトルロワイヤル的状況にあることを肯定するというか、むしろそれをあおるような発言をする都知事もいるようである。


現在、いじめにあう子どもは、死という手段しか自己の主張を「正当」に評価される手段は与えられていない。
確かに、「死ぬな」と子どもに呼びかけることは、その痛ましさを前にした人間のまっとうな反応であるだろう。
けれども、「死んでも解決にならない」という呼びかけが、いじめられている子どもに与えられている最後の手段(生死を賭けた訴え)すらも奪うことになっていることに、心優しい僕たちはなかなか気づかない。


「死ぬな」と呼びかける人間には、死ななかった先に何があるのかを明示する必要がある。
言い換えれば、「生きることが死ぬことよりも良いことである」ということを明示的に伝えなければならない。


「生きることは死ぬことよりも良いことである。」
この言葉は、放つ人間に跳ね返ってくる言葉である。
ほんとうにこの言葉を生きていない人間による、中身の無い励ましは無害どころか有害ですらある。


私たちはこの問いをほんとうに自分に問うた事があるだろうか。
多くの子どもが死を持って問いかける問い。
多くの子どもを死に至らしめる状況、すなわち私たちの生きる状況に満ちている問い。
「あらゆる生が生きるに値すると言えるのはなぜか。」


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